普段大人しい私が、いきなり空気を読まずに「先生!」と叫んだ。

 クラスの担任の唐沢先生は一瞬何事かと動きを止めた。

「どうした、遠山」

「クラスに提案があります。みんなでクラス写真が撮りたいんです」

「クラス写真? なぜ今頃に?」

「ほんの少しだけ時間を下さい。カメラは持ってきてます。すぐに終わらせますので」

 私は席を立ち上がり、皆に呼びかけた。

「皆さん協力お願いします」


 突拍子もない提案に、みんなが口々に言い出した。

 面倒くさい、勝手にすれば、やろうやろう、馬鹿らしい、面白いかも、なんで急にまた、それらが一つに混ざり合って、クラスがザワザワとする。

「お願いします」

 大きな声で再び叫んだことで、クラスは一瞬しんとした。

 なぜ私がそんな事を言い出したのか、きっと誰もわからないだろう。

 でも私は真剣だった。

 どうしてもクラス全員が写った集合写真が欲しかった。

 近江君も一緒に入ったこのクラスの集合写真が。

「先生、撮りましょうよ」

 希莉が援護してくれた。

 そして立ち上がると、柚実も「みんな撮ろう」と流れを作ってくれた。