テストが終わるとすぐクラブ活動が再開し、ここでも櫻井さんがやめることに、誰しも惜しんでいた。

 私と加地さんが残って二人でマネージャー業をこなさないといけないのだが、その加地さんは露骨に意地悪はしないけど、仲がよくなったとも言えなかった。

 これからどうしようと思っていると、常盤さんがマネージャーをやりたいと突如申し出してきたから私は悲鳴をあげた。

 その隣で草壁先輩も一緒になって叫んでくれた。

 二人でムンクの叫びのような顔になっていた訳だが、人手不足だから、顧問の先生は歓迎し、他の選手は実態を知らないから反対する人はいなかった。

 小声で「それなら私は辞めてもいいかな」と漏れてしまうと、草壁先輩は素早く反応して、私の口を押さえ込んだ。

「縁起でもない事言うんじゃない」

 草壁先輩とは気楽に話せるようになり、以前のように緊張することはなかった。

 まだ私の事を思ってくれてるらしく、時々アプローチしてくるが、何度断っても理由になってないと断り方のダメだしをされる。

 私が猫派だと知ってから、草壁先輩も気に入られようと、猫はかわいいアピールをするようになっていた。

 スマホで猫を集めるというゲームをしていると、新しい猫が現われる度私に見せてくれる。

 実はそれ、私もすでにやっている。

 草壁先輩の顔はかっこいいまま、最近動きだけコミカルで三枚目っぽくなっている。

 女生徒からいつもアイドル的存在として扱われていた自分を脱却したいと、かっこつけるのを自らやめたらしい。

 しかし、それがまた新たな魅力となって、草壁先輩はキャーキャー言われていた。


 噂では私が草壁先輩の彼女とされていて、全然知らない人から挨拶される事もあった。

 草壁先輩とは先輩後輩の枠を超えていい友達になれたとは思う。

 しかし、私は恋焦がれることはなかった。

 私が好きなのは近江君。