「あ、あたし、赤澤夏実。えっと…一応、100mやってるんじゃけど…」
沈黙。
「浅井…君は?何の選手?」
「…400」
「あ、400かぁ。きついじゃろ?あたし一回コーチに記録回で400出されたことあったんじゃけど、もう最後の方きつくてきつくて…」
沈黙。
「…えっと…」
「ナツ!次ナツの番じゃよ!」
天の助け。スターティングブロックの前で、先輩が大きく手を振っていた。
「あ、はぁいっ!」
いつも以上に大きく返事をしてから、「とりあえず…えっと、練習見学する?男子とメニューはちょっと違うけど、基本的練習場所は一緒だし…」と聞く。
浅井良平が軽く頷いたから、あたしはほっとして「じゃあトラック行こっか」と言った。



