ミラージュ


「彼、2年からうちの学校に転校してくるんだ。浅井良平君。前の学校でも陸上やっちょったみたいじゃけぇ、俺がスカウトして晴れて今日から陸上部員じゃ。2年のクラスはお前と同じじゃし、出席番号も近いけぇまぁ仲良くしてやれ」
「はぁ…」
「春休みの間、部活以外で学校に来ることもあるかもしれんけど、まぁわからんことあったらこいつ、赤澤に聞け」

これは多分彼、浅井良平に言ったのだろう。コーチはいまいち誰に向かって話しているのかわからない所がある。指示を聞くのも大変だ。

「じゃ、頼んだぞ」

それだけ言ってあたしの肩をポンッと叩くと、コーチはそのまま校舎に向かって行ってしまった。頼まれたのはいいが、あたしにどうしろと言うのだ。

「え~、っと…」

とりあえず沈黙に耐えられず、二回目の自己紹介。