(だからなの。課長……)


足元がグラグラして倒れそうだ。
でも、こんな所で倒れるわけにもいかない。



フラつきながら部屋へ戻った。
駐車場には車があったから、二人がどこかに行ったとは考えれない。



(隣にいるの?)



イジワルして電話をかけたらどうする?

「今からそっちへ行ってもいい?」と困らせてみたらどうなる?



「出来るわけないじゃない。そんな勇気どこにあるのよ」


私にヒミツを作らないで課長。
必要としているなら陰でコソコソ会ったりしないで。


真由香に聞かされるとショックなの。
私が知らない所で、その人やもなちゃんに会うのはイヤだ。



「サイテー。私……」



シットばかり一人前でイヤ。
こんな自分が一番情けない。

課長のことを信じようとしてない。
何も知ろうとしないで、全部を課長の責任にしている。

課長と歩いていきたいのは自分なのに、どうしても尻込みする。
受け身でばかりいたらダメだとわかっているけれど、気持ちが前に進んでいかない。


課長に嫌われたらどうするの。

私はまた一人きりになるのにーーー。




「ダメ……」



一人なんてイヤ。

一人なんて寂しい。


課長がいないともう。

歩きだせないくらいに好きなのに………



部屋の中で縮こまった。

隣からの物音は何も聞こえない。

不安ばかりが広がる。

私の泣き声も、きっと課長には届かないんだ。



「課長のバカ……」



罵声の一つくらい言わせてください。

勇気を出せない部下の愚痴ですから……。