キスはベランダから部屋に入れた日に奪われた。

それ以来、顔を見る度にキスや頰ずりはされている。


まるで小鳥のような扱いを受けている日々に、何の不満もないんだけれど。


「……もう少しだけ、猶予ください!」


やっと男性の腕の中で呼吸ができるようになった。

課長のキスを受け入れて、蕩けるような瞬間を味わう時もある。


……でも、やっぱり怖い。

課長だと思っててもやっぱりどこか躊躇う。


「やたらと手が出せないなんてピーチみたいだな、藍は」


課長が言うには、小鳥には必要以上に手を出してはいけないんだとか。


「発情期を繰り返して大変なことになる」


んだそうです。


「それ誰に聞いたの?」


「獣医」


小鳥のことに関しては今だによくわからないところがあります。

課長の娘のもなちゃんは、あの小鳥を上手に飼えているんでしょうか。



(課長は気にならないのかな……)


本当の飼い主に返した後、ショックでションボリとしていた。

寂しさを打ち明けられなくて、反対に怒ったような態度を見せていた。



「気が抜けたんだ。4年も世話していたのに、急に迎えに来るもんだから」


誰に似たんだ、あのワガママは…と、幼い子供に対して怒っていたけれど。



(絶対に課長です!)


言えないから伏せておきました。

あれっきり彼女は、課長の元には来ていないみたいです。