「そこの花龍ちゃんにシオンくん! 今君たちは廊下を走っていたね? 僕は見ていたよぉ~」

「あっ……ご、ごめんなさい……」

「ごめん、せーぎのみかたウサギ……」

 廊下を走るのは悪いことだと分かっているのか、二人はすぐに謝る。

「うん、ちゃんと謝れたね、偉いぞぉ~」

 廊下の影から半分出ている顔を、こくこくと頷かせる綾小路。

「君たちは、どうして廊下を走ると危ないのか解るかなぁ?」

 綾小路の問いかけに、花龍とシオンはこてん、と首を傾げる。

「それはねぇ、人にぶつかったりして、怪我したら大変だからだよぉ。怪我するのは君たちだけじゃないんだよぉ。ぶつかった相手の人にも、酷い怪我を負わせてしまうかもしれない……そんなの、哀しいよねっ?」

「う……うん」

「うん、勇者としては、人を怪我させたらダメだと思う……」

「そうだよね! そう、ちゃんと解る君たちは偉いぞぉ!」

「え、えへへ」

「へへへー」

「だからもう、廊下を走ったらいけないよぉ。解ったかな?」

「はい」

「はいっ」

 元気よく返事をした二人に、綾小路はうん、と頷いた。

「そうだ、君たちにプレゼントをあげるよ」

 綾小路の白い手の下から普通の人の手が現れて、二人に綾小路のぬいぐるみがついたキーホルダーを差し出した。