『出演料は弾むよ。ウチ(橘)と柊と藤の御三家が協賛してるし。衣装は柊だし、KANONで小物出してくれるから、広告塔として頑張ってよ』

「ホントお前何やってんの。金持ちの道楽に巻き込むな。俺で遊ぶな」

『ははは、仮面つけて正義のヒーローごっこしてる人がそれを言う?』

「てめぇが仮面よこしたんだろーがよ!」

『顔隠したいって言ったのは麗龍くんだよ?』

「目立ちたくねぇって言っただけだろ! それを何本格的なヒーロースーツ用意してんだ!」

『結局それ着てる人が文句言わないでくれるかなぁ。顔見えないんだから何でもいいじゃない。テンジンライダーはさ、もう事業なんだよ。人助けはボランティアでも、活動のためには資金が必要だろう? 君も覚悟を決めなきゃあ』

「なんの!」

『これからテンジンライダーは顔が売れて忙しくなるからね。そろそろ相棒が必要だろうし、ユリアさんにお願いしたらどうだい? 彼女もそのつもりのようだし。だからスタントマンも頼んだんだ』

「はあっ? な、なんだって?」

 聞き捨てならない言葉が聞こえてきたので問いただそうとしたのだが。

『うん、じゃあ決定ということで。給料振り込み用に麗龍くんとこの銀行で新しい口座作っておいてね。あ、ちなみに主題歌は僕が作曲してるから、良かったら買ってね~』

 と、早口で捲し立てられて、ぷつりと通話は切れてしまった。

 ……ユリアがテンジンライダー(本物)になるつもりでいる? ということは、本物が誰か知っているということか?

 麗龍はふるふると震えながらユリアを振り返った。