ポプリ

「ごめん、なんでもないよ」

「なんでもないわけあるか。……なんかあったのか」

「何も……何も、ないから」

 ごしごしと手の甲で涙を拭い、微笑んで見せるシャンリー。

 その歪んだ微笑みは痛々しく、麗龍はシャンリーの隣に腰かけた。

「リュシアンと、なんかあったのか」

 ひゅっと、息を呑み込む音がした。

「なにも、ない……」

 シャンリーは笑顔で否定しようとした。けれど。リュシアンという名前は今のシャンリーにとって、取り繕うための仮面を容易く取り払ってしまうようだ。

「……話くらいは訊いてやるって言っただろ」

「う、ふぅぅ……らい、とぉぉお~」

 ぶわり、と涙が膨れ上がる。それが目尻から零れ落ちる前に、シャンリーは麗龍の肩にごつん、と額をぶつけた。

「リュシアンさま、だめだって」

「……そうか」

「妹、みたいなんだって」

「……そうか」

「エルネストさま? って言ったら、ちがうけど、でも、今はだめだって。わたし、がんばったんだけど、なぁ。色気ないから、だめなのかなぁ」

 ぎゅう、と麗龍の服の胸のあたりを掴み、ぱたぱた涙を落としながら想いを吐露するシャンリー。

 その背中をポンポンと叩いてやったら、更に泣いてしまった。

 しがみついてくる従姉に気付かれないよう、そっと吐息を零す。いつも元気な者が泣いている姿は、見ている者も辛いものがある。

 早く元気出せ、という想いを込めて背中を撫でてやっていると、ざわ、と木々が揺らめいた。

《麗龍~! 麗龍~! ご、ごめん~!》

 何故か謝るシルフの声に、不思議に思いながら顔を上げて、はっとした。

 ユリアが、少し離れたところで立ち竦んでいた。