いつもどこかで爆発が起きたり、悲鳴が聞こえたり、賑やかな笑い声が響く天神学園は今日も通常運転。

 梅雨が明け、もうすぐ夏休みというこの日は照り付ける太陽の日差しが強く、クーラーのない教室内はむっとした熱気に包まれていた。

 しかしここに、その熱気から離れて暗くなっている者がひとり。

「うぅ……」

 眺めるのは期末テストの成績表。その内容の悲惨さに、麗龍は呻き声を上げる。

 いくら高等部へは内部進学だと言っても、この成績はさすがにヤバイのではないだろうか。かつて伝説を作り上げた赤点王スペシャルバカほどではないにしろ、これは酷い。

「母上に怒られる……」

 祖父母は元教師だし、母や姉は成績優秀だったと聞くのに、どうして自分は彼女たちに似なかったのか。どうしてなのか。なあ、どうしてなの、父上!

 ……と、他人に責任をなすり付けたくなる成績表を手に落ち込んでいると、隣の席からも溜息が聞こえてきた。

 桃色のツインテールまで元気がないように見えるのは、シャンリーだ。

「なんだ、成績悪かったのか?」

 そう問いかけると、ペラリと成績表を寄越された。

 オール満点だった。

「これのどこが不満なんだよ!」

 ダン、と机を叩いて抗議すると、シャンリーは無言で麗龍の成績表を奪っていった。それを見た彼女は、ふう、と溜息をつく。

「私が勉強を見てあげられなかっただけで、これなの……」

「うっせー! これでも頑張ったんだよ!」

「麗龍、先生になりたいんじゃなかったっけ? こんなんじゃ大学行けないよ」

「分かってるっつーの!」

 麗龍は祖父母のように、この学園の教師になりたいと朧気に思っていた。腹出し爆睡部(中国拳法部)を復活させたいな、と。それなのにこの成績では教育学部への進学はどう考えても無理だった。