麗龍は中学二年生になった。

 去年のあの事件後、両親はよく家に帰ってくるようになった。それというのも、麗龍とユリアが遭遇したあの恐ろしい敵は、インフィニティ・セクターが長年追いかけていた相手で、あの日、ようやく討ち倒すことが出来たからだった。

 あの日は何故父に「よくやった」と褒められたのかよく分からなかった麗龍だったが、その話を聞いてようやく合点がいった。

 それにしても、何故ユリアがあんな化け物に狙われていたのか。

 そのあたりは企業秘密ということで教えては貰えなかった。

「知りたきゃ本人から聞け」

 父の覇龍闘はニヤニヤしながらそう言うのだけれども、会える確率などどれくらいだろう。

 なにせ連絡先を知らないのだ。知っているのは名前と、国籍。それから、右手にあった拳銃使いによくあるタコ。

 用意していたハンカチは未だポケットに入れられて、もうピンクの花柄の紙袋は皺くちゃだ。

 
『私のものを麗龍くんが持っていたら、また会えそうじゃないですか~』


 そう言った彼女の笑顔が見たくて、手放せずにいる汚れたハンカチとプレゼント用のハンカチ。

 また、会いたい。

 修行をしているとき。学校の帰り道。朝、夢から目覚めたとき。日常のあらゆる場所で、ふと、突然にそんなことを思う。

 過ぎてゆく日々に埋もれては、いつの間にかふわりと浮き上がってくる感情。

 色褪せることなく胸の奥に居座り続けるその想いの名前が何なのか、多分、もう気付いている。

 ただその想いをどうしたら良いのか分からなくて、持て余す毎日だ。