「あー」

 麗龍が顔を見せると、花龍に抱っこされたルナは満面の笑みで出迎えてくれた。

 麗龍と花龍の持つ魔力は似ているらしく、そこにルナは安心を覚えているようだった。

 床へ下ろされると、すぐさまハイハイで麗龍に突っ込んでくるルナ。それをを麗龍も満面の笑みで迎え、抱っこしてやる。

「なんかまた重くなったか?」

「だー」

「ぷくぷくだな」

「あうー」

「このヒラヒラドレス、またヴラド先生が買ってくれたのか? 動き辛くねぇの? 似合ってるけどさ」

「きゃーう」

 会話になっているのかは分からないが、本人たちは楽しそうである。そんなやり取りを微笑ましそうに見ていた花龍は、麗龍のためにおやつを用意しようと席を外す。

 その間に、事件は起きた。


「あむー」

 ルナが麗龍の指にかぶり付く。

 おしゃぶりか何かだと思われているのだろうか。ルナは麗龍の指を銜えていると落ち着くらしい。放っておくとそのまま眠ってしまったりするので、いつもされるがままにしていた。

 しかしこの日は違った。

 ルナは成長して、歯が生え始めていたのだ。

「いてっ」

 がぶり、と噛まれて、麗龍は思わず手を引っ込めた。

「あー、お前、歯が生えてきたんだな。噛むなよ、もう~」

 ルナはきょとん、と目を丸くした後、少し哀しげな顔をした。

「あー……」

「……なに、吸いたいの?」

「あぅ~……」

「……しょーがねぇな、噛むなよ?」

 と、手を差し出す。

 しかし、赤ちゃんにそんなことを言って聞くわけがないのだ。