麗龍は二年生に進級した。

 その年の夏休み前、天神学園に大激震が走った。


「あ、そうそう、俺誕生日に結婚するから」

 あっさりと、そう報告したのはシオンだ。その短い報告に、花龍と麗龍、シャンリーを除くシオン一味は目玉が飛び出しそうなほど驚愕した。

 貴様未成年ではないか、とか、さすがリーダーだぜ、というからかい交じりの声とか、おめでとうの大合唱とか、その年で人生の墓場に入るとはご愁傷様だ、なんて嫌味から、色んな声が湧き上がった。

 シオンが卒業を待たずに結婚に踏み切ったのには理由がある。

 一年近くもミルトゥワで生活しているリプニーだが、彼女には戸籍がないのだ。長期滞在するためのビザは発行されているが、飛行艇や船の利用、公共施設でも立ち入れる範囲が制限されている。ミルトゥワ人でないと出来ないことが多く、不便な思いをさせてしまっていた。

 どうすればいいのかと言えば、手っ取り早いのが結婚だ。

 シオンはミルトゥワの法律ではもう結婚出来る。祖父母のフェイレイとリディルも天神に転校してくる前にはもう結婚していたのだし、まあいいだろうとシンと野菊も許可をした。

 そうして一年近く見知らぬ土地で生活をし、苦労しながらも支えてくれているリプニーに対し、ケジメをつけたのだった。

 祝福と怒号が渦巻く中で、「きっと目の前に極上の餌(リプニー先生)をぶら下げられて、我慢出来なくなったんだ」という噂も流れていた。

 恐らく本当の話である。