「ったく、静かにおしよ。遊里ちゃん、頑張ったねぇ、ほら、ゆっくり休みな」

 燕女ばあちゃんは優しく遊里の頭を撫でる。

「産婦さんは静かに休ませないといけませんからね。遊里ちゃんが寝ている間は私が預かっているから安心してお休みなさい。鷹雅、あんたは付き添っていてあげなさいね」

「ああ」

「さぁおいで亜鳥ちゃん、母様はお休みするから、おばあちゃんとねんねしますよぉ~」

 雲雀ママも顔を綻ばせて孫を抱き上げる。

 鴉丸の城はとにもかくにも大騒ぎ。

 鴉天狗や他の妖怪たちも招いて大宴会となった。





 そんな賑やかな誕生の日から数年後。

 少し成長した亜鳥は悩んでいた。

「どうしてわたしだけ、お皿がないの? 曽祖父ちゃんも爺ちゃんも父さんも、みんな立派なお皿があるのに。……私は翼のある河童っていう、由緒正しい希少種の妖怪なのに。どうしてお皿がないの?」

 そりゃお前が鴉天狗だからだ、と教えるのだが、亜鳥は何故か自分が『翼のある河童』と信じて疑わない。

 お皿がなきゃ河童じゃないじゃん。

 人間とのハーフだから、お皿のないダメな子として生まれたんだろうか。

 亜鳥は悩む。




「ん?」

 空の見回りを終えて家に戻ってきた鷹雅は、妙な機会音に足を止めた。その音を辿っていくと、なんと、亜鳥がバリカンを持って頭のてっぺんに押し付けようとしているではないか!

「どわあああああ! 何してんだ亜鳥いぃぃいー!」

 父さん、焦って叫びながら止めました。

「止めないで父さん! わたしも河童になるの!」

「馬鹿言ってんじゃねぇ! お前は鴉天狗だっつーの!」

「ちがうよっ、翼のある河童だよ! とっても珍しい、凄い河童なんだって母さんがいつもそう言ってるもん!」

「遊里ぃいいっ、てめぇ何教えてやがるー!!!!!!!!」


 ああ、いつまで続く、亜鳥の勘違い。









 鴉丸のおじいちゃん、孔雀っていうけど、夕城さんちの孔雀くんとはまったくの別人ですからね。同じ名前でご迷惑おかけします。