「そうさ。もし仮に、ボクが女の恰好で君を愛でたとしても、なんだか変だと思わないかい?」

「え、俺は愛でられる側なわけ?」

「もちろんさ! その蜂蜜のように蕩ける金の髪、鳥が自由に羽ばたく澄み切った空の瞳、意志の強さを感じさせる薄い唇、素直さが現れたその表情。……食べちゃいたいくらいに愛らしいね」

 うっとりとした奏楽がティーダの頬を指先で撫でた。

 美少年に見つめられる美少年。

 非常に倒錯的な絵である。

 ティーダが少し青くなっていると、奏楽はプッと噴き出して彼から離れた。

「怖がらなくても大丈夫。さあおいで子猫ちゃん。ボクの家族を紹介しよう」

 キラキラした光の粒の幻影が奏楽の周りを彩る。

 ティーダは疲れた顔で彼……じゃない、彼女についていった。



 橘本家には現在、奏楽と彼女の兄の紫道(しどう)、両親の玲音と和奏、祖父母である和音と水琴が住んでいる。

 その家族たちを紹介された後は、舞踏会でもあるのか、という夕食をご馳走になった。

 その料理の旨さに目を輝かせるものの、奏楽に対しては苦手意識が抜けないティーダ。しかしある言葉で安心出来たのだった。


「愛でるのは何も女の子ばかりじゃないよ。君のような可愛い男の子ももちろん大好きさ。最近の一番のお気に入りは龍一郎かなぁ。君は会ったことがあるのかい? そうかい。彼も可愛いだろう? 釣り目はセクシーだし、腕白でお茶目な性格にはキュンとさせられるよ。あの小さな体に秘めた燃えるような情熱とかね。最高だよ」


 仲間が出来たようで非常に安心した。物凄く安心した。










 
 学園の廊下を可愛い女の子たちに囲まれて歩いてくる美少年みたいな美少女がいたら、それは橘奏楽です。