よろしく、と手を差し出すと、相手も応えてくれた。

 それから改めて非礼を詫びる。気にすんな、と言った斑鳩は、早川家までの道のりを案内してくれることになった。

「斑鳩はいつもこの辺を飛んでいるのか?」

「ああ、見回りをな。この地区は色んなものを集めるからな。それに今は……兄貴のことも、あるからな」

 鴉丸禿鷲のことだとすぐに分かり、ティーダは瞳を鋭くした。

「鴉丸の一族の不始末を、天神のヤツラ……お前の父ちゃんとかな。他の者にに任せちまった。一族としてもこのまま放置するわけにはいかねぇってんで、学園を中心に見回ってんだよ」

「斑鳩も学園に在籍してるのか?」

「いや、俺は……じいちゃんからはそうしろって、一度言われたんだけどよ……」

 斑鳩は口籠った。

 ティーダは首を傾げながら続く言葉を待つ。

「俺と龍鷺郎兄貴は封印する側だったからな。禿鷲兄貴には恨まれてるかもしれねぇし、下手に刺激したくねぇってのがある。けど、それだけじゃなくてさ。なんつーか、やっぱ、兄弟だから……。禿鷲兄貴には直接会ったことはねぇんだよ。情なんて湧くはずもねぇんだ。でも、なんとなく……な」

 同じ血を分けた兄弟に対し、複雑な想いを滲ませる斑鳩。ここにも禿鷲によって傷つけられている者がいた。ティーダは彼の横顔を見つめ、それから空を仰いだ。

「それなら尚更、俺がちゃんと見張ってないといけないな。禿鷲と龍一郎が暴走しないように」

 誰かが傷つくのは嫌だ。

 誰かが泣くのも嫌だ。

 守らなくてはならない。

 そう、決意を新たにする。

「大丈夫。学園の中は俺が守る」

 力強く宣言すると、斑鳩はふっと笑みを零した。

「ああ、頼む。まぁなんかあったら呼べよ。助けてやっからよ」

「分かった」

 話しているうちに、辺りが賑やかになってきた。たくさんの人が行き交う中華街。早川家はもうすぐだ。













 斑鳩の見た目は相変わらず中学生っぽいまま。お兄ちゃんたちはすぐ大きくなったのにね…。

 奏楽は和音の孫です。機会があれば登場します。