「ティーダ、この剣を持って、地球に行ってくれないか」

「母さんの故郷だろ? なんで?」

「父さん、これからちょっと忙しくなるからさ。お前に頼みたいことがあるんだ」

 ティーダは頷いた。

「父さんの母校、天神学園に行って、橘龍一郎という少年に会って欲しい」

「タチバナ。……転移魔法陣のある家?」

「いや、その分家の家だよ。その少年に、『龍』が封印されている」

「龍?」

「昔話したことがあったよな。……父さんが命がけで退けた鴉丸禿鷲ってヤツのこと」

 その名前が出た途端、ティーダは身を引き締めた。

 鴉丸禿鷲。

 父が昔通っていた学園を狙ってやってきた、とてつもない強さの襲撃者。父とその仲間たちが命がけで禿鷲を撃退したけれど、彼は改心することなく、まだその学園にいるのだという。

 ティーダはユースティティアをぎゅっと握りしめた。

 その話は幼い頃から聞いていた。その襲撃者を撃退するために精霊の女王を15柱も召喚する必殺技、『メメント・モリ(救世への架け橋)』を放った父は、無理が祟ってひと月も眠り続けた。当時のことを母は泣きながら話してくれた。

 ちなみに、祖父がメメント・モリのルビを『超神皇武闘覇斬』にしようと言ったらしいが、父が断固拒否したためにそんな名前になったようだ。いや、そもそもルビは必要ないのだけれども。

 父をそこまで追い詰め、そして優しい母を悲しませた由々しき相手。それが天神学園に、いや、一人の少年に封印されているらしい。