ポプリ

 もしかしたら風邪を引いてしまったのかもしれない。そう思ったけれど、紫陽花は元気だった。ただ、恥ずかしそうに頬を赤らめていた。

 どうやらそのブラウスは夕城真太郎からの贈り物であり、真剣交際の証らしかった。

 それは真に目出度いことである。

 シャンリーは我が事のように喜んだ。

 しかしそれはそれ、これはこれ。何はともあれ服だ。

 破廉恥女王紫陽花が、服を着ているのである。



 次の日も、次の日も。紫陽花は嬉しそうにブラウスを着ている。

 小振りながらも形の良い胸も、ぷりんとしたお尻も見えない。

 飛び跳ねるように歩いているのでスカートの裾がふわりと浮き上がるが、すぐに彼女のしなやかな足を上品に隠してしまう。


「……シャンリー、どうした?」

 登校途中、元気のない妹を不思議そうに見下ろすシオン。

 シャンリーは口を尖らせて兄を見上げた。

「紫陽花ちゃんが、服を着てる」

「そうだな」

「あ、兄上は、いいの?」

「なにが?」

「なにがって、紫陽花ちゃんの愛らしい“谷下ハミ”が見れなくなっても! プリプリお尻が見えなくなってもいいのっ?」

 ちなみに“谷下ハミ”とは、胸の谷間、ブラからはみ出した胸の下部分、及び寄せて上げてぎゅっと盛り上がり、ブラから零れ落ちそうな胸の略語である。

 妹の叫びに、シオンは目を瞬かせる。

「……いいんじゃね?」

 こてん、と首を傾げながらそう言うと、シャンリーは更にいきり立った。