天神学園文化祭。

 本日はお日柄も良く、良く晴れ渡った晴天。全国から集まってくる客たちが、学園のあちこちで催されている楽しそうな出し物に引き寄せられていく。

 その中のひとつ、体育館で行われていたシオンたちのクラスによる演劇。

 本気の殺陣やアドリブの入り乱れた壮大なラブロマンス(?)に、観客は総立ちで拍手喝采。大円満に幕を閉じた。それは良かったのだが。

 本気の殺陣を見せつけたために、舞台には派手に大穴が開いてしまった。次に発表を控えていた生徒たちが、舞台を使えなくなってしまったのだった。


「ごめん!」

 パチンと顔の前で両手を合わせ、シオンは頭を下げた。

 舞台に大穴を開けたのはコイツだ。

「ごめんね、七音」

 花龍も申し訳なさそうに頭を下げる。

「すまぬ七音、妾の責任でもある」

 紗雪もしおらしく頭を下げる。彼女は七音と同級なので、友人でもあった。

「まあ、仕方ありませんよね」

 頭を下げられた七音は苦笑した。

 彼は黒髪をオールバックにし、タキシードに身を包んでいた。その手には彼の愛用しているヴァイオリン、ガルネリデリジェスの『カノン』がある。

 ガルネリデリジェスはストラディバリウスと並ぶ名器であり、しなやかで繊細な音を奏でるストラディバリウスとは違い、力強く、勇壮な音を奏でるヴァイオリンだ。そちらを選ぶ辺り、七音は『橘』ではなく、『鳴海』の血が濃いと言える。

 ちなみに、『カノン』が本物かどうかは知りません。