台所に並んで立つ雪菜と紗雪は、親子というよりも姉妹。

 仲良さげに調理をし、出来上がる頃には父の防人が夜の見回りから帰ってきた。

「父上、夜の巡回、お疲れさまです」

 紗雪は母にしたように、三つ指をついて父を出迎える。

「防人さん、ご飯出来ていますから召し上がってください。あ、それとも汗を流してからにしますか?」

「いえ……せっかくの料理が冷めてはいけませんから……」

「温め直せば大丈夫ですよ?」

 雪菜はそう言ったが、防人は手を洗った後、すぐに食卓についた。

 そこで兄の冬樹も起きてくる。

「兄上、おはようございます」

 冬樹はぼーっとしたまま自分の席に座り、全員分のご飯を装った頃に、紗雪に向かって頭を下げた。

「……紗雪、おはよう……」

「うむ、おはようなのじゃ兄上」

 紗雪は頷き、いただきます、と手を合わせた。

「兄上はいつもぼーっとしておられるが、そんなことでは花殿を嫁に迎えることなど出来ぬのではないか?」

 鮭に大根おろしを乗せ、醤油を垂らしながら紗雪は言う。

「うふふふ、花ちゃん、お嫁さんに来てくれますかねぇ。冬樹の方がお婿さんに行った方がいいでしょうかねぇ。ねえ、防人さん?」

「……二人がしあわせになるのなら、どちらでも良いかと……」

「そうですね、しあわせになれる方を選んでくれるといいですね。ね、冬樹」