「あぁーぼくの愛しいカノンー」

「安心しろっ、犯人はおれがやっつけてやるぞっ」

「ここに、犯人の痕跡があるよ。かんしきさん、呼ばなきゃ」

 それぞれ自由にフラフラ歩き回り、自由になにか喋りながらままごとは進行していく。

「ああ、こんどはぼくの愛するおよめさんがゆうかいされましたぁ」

「犯人はおれがつかまえてやるぞぉ~」

「身代金は、いくら要求されましたか」

「ひゃくおくえんです」

「ひゃくおくえんって、何フラー(ミルトゥワの通貨単位)?」

「よく分かんないけど、いっぱいだよ。地球買えるくらい……?」

「うん、そのくらいです」

「すげー、ひゃくおくえん!」

 すげぇな、百億円。

 そんな突っ込みどころ満載のおままごとは、いよいよ佳境に入ってきた。

「あっ、ひゃくおくえんわたしたら、およめさんが帰ってきましたぁ~」

 と、七音が花龍にひし、と抱きつく。

「……わたし、えーじぇんとじゃなくて、七音のおよめさんだった」

「えええええ!」

 シオン、絶叫。

「だめだよぉ! 花龍はおれの嫁だもん!」

 花龍の腕を引っ張るシオン。

「……わたし、シオンのおよめさんにも、なった?」

「ちがいますー、花龍ちゃんは、ぼくのおよめさんですー」

 花龍の反対側の手を、七音が引っ張る。

「花龍はおれの嫁だよ!」

「花龍ちゃん、ぼくをあいしてるって、ゆってくれましたよね?」

「いーや、おれのことがすきなんだよね?」

「ぼくですよね?」

「おれだよね?」

「どっちかえらんでくらさい!」

「えらんで花龍!」

「は、はにゃー」

 ぐいー、ぐいーと両側から引っ張られて困った様子の花龍だが、おままごとは続行らしい。