子どもたちは元気である。

 走り回っていたかと思えば、今度は花龍が精霊術を披露。森の精霊ドリアードが庭の芝生から花をぽこぽこ咲かせる。それを見たシオンが張り合って水の精霊ウンディーネを召喚し、水を霧状に噴射して虹を作ってみせる。七音は手を叩いて大喜びだ。

 そうして今度は、噴水前にしゃがみ込んで相談を始める。

「じゃー、ままごとやろう。あれ、面白かったから」

 一番お兄ちゃんのシオンが、そう提案する。

「いいよ」

 花龍がこくりと頷く。

「わかりました、じゃあ、ぼくはお金持ちのヴァイオリニストをやります」

 そのまんまな七音。

「じゃあ、おれ、正義のゆーしゃにする。花龍は?」

「凄腕の、えーじぇんとー」

 花龍は肩にかかった細い三つ編みをピン、と弾き、両手を合わせて拳銃に見立てた。父の真似らしい。

「よーし、それじゃ、はじめるよぉ~」

 シオンの合図で、それぞれ意味も無く動き出す。

「わあ~、ぼくの大事な『カノン(ガルネリデリジェス。高価なヴァイオリン)』がぬすまれたぁ~、だれかたすけてくらさーい」

 芝生の上をフラフラ歩きながら、七音が声を張り上げる。

「なにっ、それはたいへん! 犯人はだれだっ」

 大袈裟に驚いたシオンは、何が盗まれたのか把握しないまま、ふらふらと『カノン』とやらを探しに歩いていく。

「……三丁目の角で、どこの銀行がいいか話しあっているあやしい人を見たの。きっと、そいつが貸し金庫からぬすんだの……」

 五歳児にしてはやけにリアルな情報を提供する花龍。