ポプリ

「皇太子は優秀な方だ。それを支えるのがお前の役目だろ。死ぬまで一緒なんだから少しくらい仲良くすれば?」

「嫌いなモンは嫌いなんだ!」

「そう言わずに」

「うっせ! 黙れ! 帰れ!」

 ふん、と横を向くアイシャ。取り付く島もないとはこういうことを言うのか。シオンは少し考えて、それなら一気に核心に迫ってやろうと思った。

「どうしても皇太子は嫌か」

「嫌だね!」

「なら、フルート家のカミーユは?」

「えっ……」

 アイシャの顔が一気に赤く染まり、声が一段階高くなった。

(分かりやすっ!)

 シオンはビックリした。

「な、なんでアイツがそこで出てくんだよ、カンケーねぇだろ、別に、なあ」

 動揺している。指先を絡めてモジモジしている。……なあ、なんでこんなに分かりやすいのに皇太子妃にしようとしたの、神殿。シオンは思わず遠い目になった。

「……なるほど。カミーユのために皇太子に嫌われようと努力していたのか」

 ついでにマリアベルの婚約者(今のところまだ)であるシオンに対しても同じ態度でいれば、自然とアイシャの悪評が皇太子に伝わり、婚約を破棄出来るかもしれないと。なるほど、涙ぐましい努力だ。これが彼女の素だけど。

「は、はあっ? そんなんじゃねぇよ、ばっかじゃねぇの!」

 真っ赤な顔で言われてもまったく説得力がない。

 うん、よし、かわいい。

 シオンは頷いた。

「分かった。それなら、俺がなんとかする」

「は? な、何が?」

「お前とカミーユを結婚させる」

「え、ええっ、ちょ、やだっ、なに言ってんのアンタっ」

「ちょっと待ってろ。カミーユとも話してくる」

「や、やだ、ちょっと待ってシオン様!」

 すっかり別人となったアイシャが、席を立つシオンの後を追ってくる。