ポプリ

「どっちだよ」

 確か兄弟は二人いたよな、とシオンは訊いてみる。

「……あ、兄上様、です」

 シオンは天を仰いだ。

 成程、無理だ。

 血の繋がった兄妹だからではない。むしろ濃い血を望まれているのだから、魔力の高いマリアベルなら歓迎されるだろう。問題は、マリアベルの兄上──皇太子にはすでに婚約者がいるということ、そして、シオンが文句を言える相手ではないということだ。

「あれ、でも」

 その婚約者は、確かマリアベルと一、二を争う魔力の持ち主、ルルディ公家の姫だったはず。魔力の高さと精霊との親和性の高さから選ばれたのだが、しかしその姫はお転婆で有名で、彼女を抑えられるのは姫の幼馴染であるフルート公家の公子だけで、婚約する時には少し揉めたと聞いたような気がする。

 ちなみにルルディ公家の姫とは、シオンの母と仲の良いシャルロッテの娘だ。だからこそ知っている話だった。

「……なんとかなるんじゃないか? 兄上とは話したのか?」

「いいえ……すでに決まったことで、兄上を煩わせることなど……」

 成程、いい子故に、我儘を言えないらしい。

 なんとか出来るかもしれないが、かなりの労力を必要とする。もし花龍がプロポーズを受けてくれていたら、何が何でも頑張って説得しただろうが、今のシオンにはそこまでする気力はなかった。

 それでも、目の前で必死に恋心を抑え込もうとしているマリアベルはいじらしい。