繋がれた幼く、小さな手。


 それはずっと変わらないもので、変わることがあるなど、考えたこともなかった。


 崩れていく想いのカタチは、きっと。


 変えてしまうのが、早すぎた。





「花龍、俺と結婚してくれ」

 中等部三年の夏休みを目前にしたある日。朝登校してきて、荷物をロッカーに置いて席についてすぐ、シオンがそう言ってきた。

 今まで好きだ、ちゅーしたい、お尻揉ませて、など、セクハラ紛いなことは言われてきたが、真剣に意思表示されたのはこれが初めてだった。

「……急に、どうしたの」

「俺と、結婚してくれ」

 花龍の机に両手をつき、ずいっと顔を近づけてくるシオン。

「……ええと。まず、座って落ち着いたら?」

 怖いくらいに真剣な目をして迫ってくるシオンに、隣の席の椅子を勧める。まあ、そこは彼の席なのだが。

 シオンは軽く息をついて、うん、と素直に応じた。二人は椅子に座り、向かい合う。

「それで、急にどうしたの。……皇家の方でなにか?」

「15歳の誕生日に婚約者を決めないといけない。ユグドラシェルの血を持つ相手でないと許されないんだ」

 シオンは花龍を正面から見つめながら、そう言った。

 誕生日といえばもうすぐだ。夏休み中にシオン、そして花龍も15歳になる。

「……それは、急に言われた話なの?」

「いや、前々から聞いてた。だから俺はずっと花龍にアピールしてただろ」

 そう言われ、花龍は翡翠色の瞳をきょとりと丸くした。

「そんな覚えはないけど……」

 えええ、と二人の会話を盗み聞いていた生徒たちが驚きの視線を花龍に向けた。シオンも若干目を丸くしたが、その返事は想定内だった。恐らく気づいていないのだろうと思っていたからだ。