「ふふふ、冬樹のお手伝いをして疲れているんですね。あ、防人さん、お茶のお代わりを淹れましょうか」

 急須に茶葉を入れながら訊ねると、防人はそっと湯飲茶碗を雪菜に差し出した。

「お願いします……」

「冬樹もお茶のお代わりは?」

 防人の湯呑茶碗にお茶を煎れながら、冬樹の湯呑も用意する雪菜。

「……………大福……甘過ぎず、とてもおいしいです……」

 冬樹からは一歩遅れた大福の感想がやってきた。雪菜はにこにこと笑う。

「そう、良かったぁ。はい、お茶、淹れておきましたからねぇ」

「……………はっ。すみません、大福のおいしさに浸っていました……お茶、いただきます……」

「どうぞー。ゆっくり味わって食べてくださいね」


 こうして、ちょっとズレた小岩井家のバレンタインは過ぎてゆく。











 冬樹くんのゆっくり加減は、雪菜も小岩井さんもまるで気にしないマイペースな人だからなのかもしれませんね。