大きな物音がして、目が覚めた。
董子さんのベッドで本を読んでて、そのまま心地好く眠ってしまったようだ。


リビングに出て見れば、董子さんは帰っているのに、部屋の電気は点けられていない。
目を凝らして電気のスイッチを押せば、目の前に、ポロポロと涙を零した董子さんが椅子に座っていた。


その泣き顔にそそられた。
今にもこの胸の中に収めたい衝動を堪え、声を掛ける。


何を聞いても、首を横にしか振らない董子さんに、我慢の堰はいとも簡単に切れてしまい、抱き締めた。


こんなにも可愛い人がいるのかと、俺の中で泣き続ける董子さんを、昨日初めて会ったはずの董子さんを、愛おしいと思った。
こんなにも小さくなって泣いている董子さんを、護りたいと思った。



「何があったかわかんないけど、もう泣かないで。俺が傍についてる。」



一生このまま董子さんの傍になんかいることは、叶わぬ儚い夢だとわかってはいても、今の俺の本心を、董子さんにぶつけたかった。