Another moonlight

「それは結婚に踏み切れない理由だよね。それなのに断れない理由は?やっぱり宮原くんのことが気になる?」

リュウトのことが気になるかと聞かれ、気にならないと言えば嘘になる。

けれどユキ自身、リュウトのことはずっと前にあきらめたつもりだった。

「よく考えたら、リュウがロンドンに行ってからこの間の同窓会まで、ずっと会わなかったんだよ。ハルと結婚するって急に言われて戸惑ったけど、私は好きだとも言わなかったんだし…リュウが選んだんだから仕方ないとも思ってる。」

「じゃあ…何がそんなにユキちゃんを躊躇させてるの?」

何が、と聞かれても、ユキ自身もわからない。

年齢的にも先のことを考えたら、そろそろ結婚を考えてもおかしくはない。

サロンのことを置いといたとしても、タカヒコとの結婚にあまり気が進まないのは確かだ。

それなのに断ることもためらっている。

「みんな結婚してくし…なんかもう…自分がどうしたいのかよくわかんないんだけど…。」

ユキはビールを飲み干して、通り掛かった店員におかわりを注文した。

テーブルに並んだ料理に箸を伸ばしながら、違和感を覚えて首をかしげた。

「ん…あれ?」

「どうかしたの?」

「なんか足りなくない?」

アユミは伝票に書かれているオーダーとテーブルの上に並んだ料理を照らし合わせた。

「頼んだものはみんな来てるよ。何か注文し忘れたの?」

「なんだっけ…。」

ユキはスモークサーモンを口に運んで考える。

不意に、一緒に居酒屋に来た時のアキラのいつもの言葉を思い出した。


“やっぱとん平焼きと焼きそばは絶対外せねぇな!!”