「オレもユキも、付き合っても別れたら友達には戻れないって思ってたしさ。友達なら恋人みたいに別れたりしねぇだろ?ずっと笑って一緒にいるには友達でいるしかなかったんだ。バカみたいだろ?」

アキラの作り笑いが痛々しくて、マナブはタバコに火をつけるふりをして目をそらした。

「結局つらい思いするなら、もっと早く好きだって言ってふられてさ、潔くあきらめれば良かったな…。そうすればこんなに長い間片想いしなくて済んだんだ。…オレも、ユキも。」

「いくらなんでも長すぎんだろ…。せめて自分の気持ちくらい伝えたらどうだ?」

マナブがそう言うと、アキラは声をあげて笑った。

「言ったよ、ずっと好きだったって。でももう友達ヅラしてんの限界だからやめるって言って終わらせた。」

「アキはそれでいいのか?」

「いいも何も、どうせユキはオレのことなんか男とも思ってねぇからな。あんま腹立つから、無理やりキスしてやった。ずっとしたいと思ってたはずなのに、あんなことしてもただ虚しいだけだったわ。」

アキラは自分を嘲笑うように、渇いた笑い声をあげた。

マナブはいたたまれない思いでアキラの肩を叩いた。

「ホントにバカだな…。リュウよりオレを好きになってくれって、なんでちゃんと言わねぇんだよ…。」

「そんなカッコわりぃこと、口が裂けても言わねぇよ。」

アキラは胸につかえた何かを飲み込むように、勢い良く水割りを煽った。

「もういいんだ。おかげで吹っ切れた。それにオレにはカンナがいるしな。カンナはユキと違ってオレのこと好きだって言ってくれるし、オレの好みに合わせたり料理作ってくれたりさ…健気だろ?」

本当は全然吹っ切れてなんかいないくせに、アキラは無理して笑っている。