その後、アキラはリュウトの実家の美容室へ荷物を届けに行った。

美容師をしているリュウトの姉の琉璃華(ルリカ)が、客の髪をカットする手を止めて荷物を受け取った。

「ありがと。アキラ、久しぶりじゃん。元気にしてる?」

「元気ですよ。」

アキラは伝票を差し出しながら笑う。

ふたつ歳上のルリカは、中学時代にいくつもの伝説を作ったヤンキーの先輩で、美人で強くて優しくて、アキラやユキにとって憧れの存在だった。

ルリカは二十歳の時にシングルで娘の波琉(ハル)を出産して、そのハルも今では高校1年生だ。

ハルは小さい頃から毎日飽きもせず“ハルが大きくなったら結婚しようね!”と言うほど、リュウトを慕っていた。

独身を貫いているルリカだが、子供を産んで30代半ばを過ぎた今も相変わらず美しい。

「そうだ。今日の夕方、リュウト帰って来るんだ。アキラ、寄ってみる?」

ルリカはサインをした伝票をアキラに差し出しながら微笑んだ。

「リュウ、帰って来るんですか?会いたいな。でも急にいいんですか?」

「リュウトには私から言っておくから。適当に離れに行ってやって。」

庭の離れがリュウトの部屋になっていて、昔からよくそこに集まって遊んでいたことを思い出し、アキラは思わず笑みを浮かべた。

「わかりました。仕事終わったら寄ります。」

アキラは美容室を出て、配送車に乗り込んだ。

昔から仲の良いリュウトに会ったら、ユキの気も紛れるだろうか。

アキラは営業所に戻ってから、いつもより少し早めに仕事を切り上げられないかとユキにメールをした。

今日はミナがユキの代わりに閉店まで残ってくれるらしく、6時頃にはサロンを出られると返信があった。

アキラはその頃に迎えに行くと返信をした。

(マナも会いたがってたし、マナんとこにみんなで飲みに行くか。トモにも会えたらいいんだけどな。)