Another moonlight

翌朝。

(ん…?なんだ、くすぐってぇな…。)

アキラは鼻先に当たるくすぐったい感触で目覚めた。

ゆっくりと目を開いて、アキラは驚きのけぞりそうになる。

(うおっ…!ビックリした…。)

アキラの腕の中で、ユキは裸のままスヤスヤと寝息をたてている。

くすぐったい感触の正体は、ユキの髪の毛だった。

(気持ち良さそうに寝てんな…。)

アキラは愛しそうにユキの寝顔を見つめて髪を撫でる。

ユキのまつ毛が微かに揺れた。




夕べあれからアキラは、手を引いて部屋の前までユキを送り届けた。

いつものようにじゃあなと言って帰ろうとすると、ユキがアキラの服の裾を引っ張った。

「…どうした?」

「なんでこのまま帰るの?」

「えっ…。」

ユキに思わぬことを言われて、アキラはたじろいだ。

「私とは無理だから?」

「無理って…なんのことだ?」

「こんな色気もへったくれもねぇやつとは無理って、言ったじゃん。」

確かにそうは言ったけど、あれは売り言葉に買い言葉で咄嗟に出た言葉だ。

もちろんユキのことをそんなふうに思ったことなど一度もない。

色気がなくて無理どころか、いつもユキに触れたい衝動を抑えるのに必死だった。

「ユキだって…オレとは有り得ねぇって言っただろ。今更だって。」

「言ったけど…。」

ユキはうつむいて、アキラの服の裾をギュッと握りしめた。

「今は、有り得なくないよ…。」

「オレも男だからな。そんなこと言うと、遠慮なく食っちまうぞ?いいのか?」

「……言わせんな…バカ…。」