マナブは昨日のユキの不服そうな表情を思い出しながら、アキラにビールのおかわりを差し出した。

「なぁアキ…。男はやっぱ、ここぞって時には思いきらねぇとさ。いつまでもウジウジしてると、ユキちゃんに愛想つかされんぞ。」

「それは…。」

アキラはウロウロと視線をさまよわせている。

その様子はまるきり思春期の少年のようだ。

「ずっとそばにいてやるなんて、嫌いなら言えねぇよ。アキだってホントは、ユキちゃんとずっと一緒にいたいだろ?友達としてじゃなくてさ。」

「まぁ…そうだな。」

「モタモタしてっと、オレがユキちゃんもらっちまうぞ。」

マナブがわざとけしかけるような言い方をすると、アキラは激しくうろたえながらも、まっすぐマナブの目を見た。

「それはダメだ。いくらマナでもそれだけは許さん。」

「だったらここらで覚悟決めろ。男だろ?」

「お…おぅ…。」



アキラとユキはバーで一緒に酒を飲んだ後、寒くて暗い夜道を並んで歩いていた。

冬の夜風は冷たく、吐く息は白い。

アキラは隣を歩いているユキの様子をそっと窺う。

ユキは冷たくなった手に、はーっと息を吐きかけて寒そうに両手をこすり合わせた。

「さむ…。」

「さみーな。」

アキラは思いきってユキの手を握り、その手をコートのポケットに突っ込んだ。

「こうすりゃ少しはあったけーだろ。」

「うん…あったかい。」

照れ隠しなのか、手を引いてさっさと歩くアキラの背中を見て、ユキは微笑んだ。