ユキがそんなことを考えているとも露知らず、アキラはユキに話し掛けられたことにうろたえていた。

ユキに背を向け気味に座り、耳まで真っ赤になっているのを気付かれないように隠す。

(焦った…。ってか…普通に話せばいいのに、なんでオレはこんなそっけなく答えるんだ!!)

さすがにこれはまずいと思ったアキラは、正面を向いて座り直し、緊張してカラカラになった喉をビールで潤して、ゆっくりとユキの方を見た。

「やっぱ…1個くれ。」

「ん?」

ユキが顔を上げた。

こんなに間近でユキの顔を見るのは久しぶりで、アキラの胸が急激に高鳴る。

本当はもうお腹いっぱいなのに、アキラは皿に乗った唐揚げを指差した。

「それ…1個くれ。」

「唐揚げ?」

「…おぅ。」

「いいよ。はい。」

ユキは唐揚げを箸でつまんで、アキラの口の前に差し出した。

「えっ?!」

(なんだこれ?!あーんってやつか?!このまま食えばいいのか?!)

ユキは激しくうろたえているアキラを不思議そうに見た。

「食べないの?」

「えっ?!いや…やっぱやめとく。」

「ふーん…?」

「いや…やっぱ食う。」

「どっちだよ。食べるの?食べないの?」

ユキが少し苛立った様子で唐揚げを差し出した。

アキラは思いきって口を開き、唐揚げを素早く口に入れた。

(あーもう!!めちゃくちゃ恥ずかしいじゃねぇか!!ドキドキさせんなよ、バカ!!)

照れ臭いのを通り越して、なんだか無性に腹が立つ。

アキラは唐揚げと一緒に胸のモヤモヤを流し込むように、一気にビールを飲み干した。

そしてまたおかわりしたビールをすごい勢いで煽った。