マナブとユキは、アキラをはさんで楽しそうに会話をしている。

アキラはそれを聞きながらイライラしている。

(何が“それはいいかも”だ!オレを間に置いてそんな話すんなよ!!)

何も言わず苛立たしげにビールを飲み干すアキラを見て、マナブはまた込み上げてくる笑いを必死で堪えた。

「なんか忙しくなってきたな。オレ、ちょっと手伝って来るわ。しばらく二人で飲んでて。」

マナブは席を立ってカウンターの中に入り、他の客の相手をし始めた。

注文を取りながら、並んで座っているアキラとユキの方をチラリと見てほくそ笑む。

(さぁアキ、どうする?指くわえて見てんのか?それともここらで覚悟決めるか?)






アキラは空になったグラスをカウンターの上に置いて、ビールのおかわりを注文した。

仏頂面でおかわりを受け取り、また無言でビールを煽る。

ユキは料理を口に運びながら、そっとアキラの様子を窺った。

(アキ、なんか機嫌悪いみたい…。一度もお見舞いに行かなかったから怒ってるのかな?それとも私が来たのが気に入らなかったとか…?)

アキラはユキの方を見向きもしないで、タバコを吸いながら、ひたすらビールを飲んでいる。

ユキは思いきって、アキラの服の袖を引っ張った。

アキラはほんの少し首を動かして、チラリとユキを見た。

「アキ、これ好きだよね。食べる?」

「…いや、いい。さっき食った。」

それだけ答えると、アキラはまたそっぽを向いた。

「ふーん…そう…。」

ユキはいつになくよそよそしいアキラの態度に肩を落としてビールを飲んだ。

(なんか…避けられてる…ってか、嫌われてる?来ない方が良かったかな…。)