「ユキちゃんはアキのもんじゃねぇもん。オレがユキちゃんにプロポーズしてもおかしくねぇだろ?」

「……。」

(もっともすぎてなんも言い返せねぇ…。)

アキラはうつむいて拳を握りしめた。

確かにユキは、自分のものじゃない。

他の誰がユキを好きになってもおかしくはないし、ユキが誰を選んでも文句は言えない。

けれど自分がユキから目をそらしていたうちに、マナブはユキに正面から向かって行ったのだと思うと、アキラは自分の不甲斐なさが悔しくて仕方がない。

マナブは黙り込んでしまったアキラの背中を叩いた。

「どうした、アキ。もっと食えよ。」

「オマエ…オレの気持ち知ってて、よく平気でそんなこと言えるよな…。」

アキラは箸で焼きそばをつつきながら、ため息混じりに呟いた。

「平気でって…。焦ってつまらん男に引っ掛かるくらいなら、オレの方がまだましだろ?さっきも言ったけどな、嫁の貰い手がなかったらだぞ?」

やけに念を押すような言い草だ。

アキラは焼きそばを口に入れて、少し考える。

「もしユキが他の男と結婚するって言ったらどうすんだよ?」

「そん時はそん時だ。ユキちゃんが幸せなら、それでいんじゃね?」

「適当だな、マナ…。」

(マナの考えてることがいまいちよくわからん…。その程度の気持ちで結婚なんてできんのか?それとも一回経験するとそんなもんなのか?)

腑に落ちない様子で顔をしかめながら料理を口に運ぶアキラに、マナブは必死で笑いを堪えた。

「誰と結婚するとかしないとか、それはユキちゃんの自由だ。オレに取られたくなきゃ、さっさと捕まえるんだな。」