Another moonlight

6時半を過ぎた頃。

アキラはマナブのバーへ足を運んだ。

開店して間もない時間、店内はまだ客の姿もまばらだ。

マナブはカウンターの中に立ち料理を盛り付けている。

「よぅ。」

「おっ、来たな。」

アキラがいつものようにカウンター席に座ると、マナブは笑いながら2つのグラスにビールを注いだ。

カウンター越しに二人で乾杯して、勢いよくビールを喉に流し込んだ。

炭酸の泡が喉の奥で弾ける久しぶりの感覚に、アキラはクーッと声をあげる。

「はぁ…うまい…。」

「うまいか?シャバの空気はどうだ?」

「シャバって…人聞きわりぃな。」

「なんでだよ。グラマー熟女ナースに自由を奪われてたんだろ?」

「グラマー熟女ナースって…。それを言うなら泣く子も黙る鬼の看護師長だ。」

マナブは料理を盛り付けた皿を、得意気にアキラの前に並べた。

「ほれ、オレからの祝いだ!!遠慮なく食え!」

皿の上のそれはいつもバーで出しているメニューではなく、家庭の食卓に並ぶような、アキラの好きな料理ばかりだった。

「焼きそばだろ、唐揚げだろ、とん平焼きだろ、チャーハンに肉じゃがにハンバーグだろ。アキの好きなもん、いろいろ作ってみた。あと、サラダもな。」

「すげぇマナ…普通の料理なんてできたんだな。」

「オレ、こう見えても元既婚者よ?たまに嫁と子供に飯作ってたし、料理はそこそこ得意。」

「そういやマナはバツイチだったな…。」