この間までは頻繁に店に飲みに来ていたのに、なんとかしないとその時間を作れないような理由はどこにあるのか?

どう考えても普通じゃない。

「なんとかして…って…やっぱおかしいぞ。今すぐ理由言え。何隠してんだ。」

マナブが強い口調でそう言うと、アキラはまたため息をついて、観念したように口を開く。

「………自由がない。」

「え?」

「仕事終わって家に帰るだろ。そしたらさ…部屋の前でカンナが待ってんだよ、毎日…。」

「毎日?!」

「休みの日は朝から部屋に来て晩までいる。この日が休みだって教えてなくても、なんでかわかんねぇけどカンナは知ってんだ。」

マナブの背筋に冷たいものが走った。

「それ異常だろ…。おかしいとは思わねぇのか?」

「なんで知ってんだって、最初は思ったけどな。一緒にいるって言ったのはオレだし…もういちいち気にするのも疲れた。」

何かに取り憑かれたような覇気のないアキラの様子に、マナブは唖然とした。

少し前までのアキラからは考えられない。

「ちょっと待て、アキ。ちゃんと詳しく話してくれ。」

「話せば長くなるし、オレまだ仕事中だしな。とりあえず営業所に戻らねぇと。」

「そうか…。じゃあ、今日は会社から直接店に来い。カンナには会社の同僚と飲みに行くとでも言っとけ。わかったな?」

「わかった、そうする。」

アキラは素直にうなずいて、配送車に乗って去っていった。

マナブは店に向かって歩きながら、さっきのアキラの様子を思い出して身震いした。

(アキのやつ、かなりヤバイぞ…。あんな虚ろな目ぇして…。なんとかしないとアキが壊れる…。)