腕。
ゴキブリの指は、俺の松葉杖にかかる腕を指差す。
「…少しだけ…触ってもいい?」
「はぁ…?」
触るって…?
ゴキブリの指は震えている。
「俺の腕触りたいって事か?」
こくん。
頷く二重顎。
「は? なんで??」
「…形とかきれいだから…嫌ならいいよ…他には特に希望はないから…」
「…マジか…?」
うわぁ…ガチでキモイ。
ゴキブリに触られるとか、マジで勘弁してほしい!
こんなキモイ女に触られ…。
俺が固まっているとゴキブリは『ごめんね』と言って、俺に背を向ける。
「机の場所はもうわかったから、後は自分で大丈夫…先に戻って」
ずんぐりとした背中がもそもそマットをどかす。
ああ…気を使われた…馬鹿でもわかる。
ゴキブリは、俺を先に返して教室に戻る時間をずらしてくれるつもりなんだ…。
俺が殿城みたいにともこに虐められない様に。
「おい」
「ぁ…」
俺は、ゴキブリに手を差し出した。
「今なら誰も見てない…触ってもいい」
「…!!」
嬉しいのかゴキブリの口元がぎこちなく釣り上がる。
