トモダチつくろう

 トラックに轢かれる所だった俺を助けてくれたゴキブリ。

 確かに、デブでニキビでうじうじしててかてかの長い髪なんて本当にゴキブリみたいでキモイけど俺の命の恩人に変わりない。

 「おい! 昨日は____」

 勉の肩を借りてようやく立ち上がった俺が見たのは、自分の机があったであろう場所に立ち尽くすゴキブリの姿だった。

 「うわっ、あいつらマジでやりやがったのか…引くわ…」

 ぼそりと勉が言う。

 ゴキブリの席。

 その列の五番目ある筈であった机や椅子はなく、ぽっかりと穴があく。


 くすくす。
  くすくす。


 すすり笑う教室。

 みんな知っているのだ。

 誰が机を隠したか、どこにあるのか。

 知ってて誰も教えず、ゴキブリの反応を楽しんでいる。

 これはそういうものだ。



 キーンコーン
    カーンコーン


 始業のチャイムがなって、ガラッと教室の戸が開いて入ってくる…ああ、そうか今日は来たんだ。

 入ってきたのは、青白い顔の女教師。

 このクラスの担任、倉根すみ子(くらねすみこ)。

 俺達生徒と倉根先生とは、実に一週間ぶりの再会だ。