「取り敢えずどうしよう…友彦くん立てないよね? お家の人呼べる?」
おろおろしながらゴキブリが聞いてくる。
「ダイジョブ…スマホ…あ…」
震える手で鞄から出したスマホは、例のごとく電池切れ…ああ、勉とアプリで遊ぶんじゃなかった…これじゃ自力で帰るしか方法が無ぇ…。
ちらりとゴキブリを見ると、ゴキブリは慌てて下を向く。
「ご、ごめんなさい…私、スマホ持ってないの…」
期待はしたなかったが、参った。
辺りはすっかり、日が暮れて人気も無くなってきた…マジでどうしよう。
激痛あまり思考が働かなくなってきてる所に差し出されるずんぐりとした手。
「…送っていく…つかまって…もうこんなに日が暮れてるから…」
顔を伏せるゴキブリ。
腫れあがって激痛のはしる足。
コレはもう、痛すぎてキモイとか嫌だとかの場合じゃない!
俺は、一刻も早く家に帰りたい一心でその手を取った。
ぐんっと引っ張りあげる手。
あれほどキモイと思った相手の手は、意外と固くて力強く俺を引き上げゆっくりとゆっくり気遣いながら家まで送ってくれた。
