トモダチつくろう

 「ぁ…」


 怯えたような申し訳なさそうな顔。


 『キモイ・触るな・きたいない』


 恐らくゴキブリは、いつもみんなに言われているそれらの意味合いと同じととって『触ってごめんなさい』と小さな声でいう。


 「…ちげーよ、足ガチでいでええええええええ!」


 凄まじい痛み!

 これ、もしかしなくても折れてる感じ??

 
 「嘘だろぉ~…」

  
 もうすぐバスケの試合だったのに…俺、レギュラーだったのに…。

 もう、悔しいやら悲しいやらでゴキブリの前だというのに無事なほうの膝を抱えて俺は泣く。

 
 「友彦くん…」

 すっと差し出されたタオル生地のハンカチ。

 「私のでごめんなさい…ちゃんと洗ってあるから…」

 赤黒い顔が、俯く。

 俺ってやつは、こんなに足が痛いのに差出されたハンカチを使うかどうか正直一瞬手が止まった。


 だって、あの『ゴキブリ』の所有物だぜ?

 そんなので顔を拭いたとクラスの連中に知れたら、ある意味俺の学校生活は終わるだろう…でも…。

 
 「グジュ…ありあと ズズ…」

 俺は受け取って、目に当てる。