殿城ゆう。

 と、言えばつい最近転校してきた奴で確か…初日から…。

 皆がざわめく中、俺はちらりとそちらを見る。


 転校初日でアイツに絡んだ殿城は、ともこに目をつけられて徹底的にやられた。

 俺の知る限りじゃ、あの二人が友達のようにしていたのはほんの一週間も無かっただろう。

 酷く腫れあがって赤黒くなったアイツの横顔は、はっきり言って汚いし太って膨れた体は臭そうだけどどうだからと言ってクラスをあげて『いじめ』ていい訳じゃない。

 そんな事は、みんな知ってる。

 だけど、今更やめたなんて言えばともこに目をつけられて殿城のように酷い目にあうのは明白だしなによりだれもアイツの事なんか好きじゃないからそこまでしないだろう。

 だって、面倒じゃないか?

 特に興味のないどころかキモイと思っているような奴助けて、自分が酷い目に合うなんて馬鹿げてるだろ?


 「君!」

 ざわめく教室に、教頭の声が響いて一瞬皆がしんと静まる。

 「君だよ君! 確か君の家は殿城ゆうさんの家と近かったよね? 見なかったかい?」

 教頭は真っ直ぐアイツを見て言った。