ニキビもある。

 「じゃ、殿城さんはあの空いてる席に座ってね!」


 先生に言われてその子は、机の間をずんずんあるいて来て、どさって赤いランドセル机に置いた。


 「よろしくね!」

 「…」

 「え、と、よろしくね?」

 「…」

 「あんたに言ってるんだけど?」


 へ?

 「ごめんだけど、教科書みして」


 その子は、言うけど教科書…マジックでバカとかシネとかいっぱいで塗りつぶされてて見せるの恥ずかしい…。

 「もしかして忘れたの? 困ったな…って持ってんじゃん!」


 ごつん!

 机、くっつけてきた?!

 机の上に出しっぱなしだった国語の教科書みつけて、机ごつんて!


 「けちけちしないで見せてよ!」

 「…!」

 あっ。

 「…は? なにこれ?」


 ひょいって、取られた国語の教科書。

 表はカッターでズタズタのをセロテープでとめた上にマジックで『ブタ』中もマックでボロボロ…恥ずかしい…見ないでよ…!

 「さいてー」

 ぱたんって教科書を閉じたその子は、そのままだまって黒板の方をむいちゃった。