「豚!」

 「死ね! 死ね! 死ね!」

 「キタナイ! 死ね!」


 廊下を歩くと、男の子が3人すれ違いながら言う。


 おはおよう。


 声に出さないで私は挨拶する。


 「こっちみんな! 腐る!」

 「キモイ声で喋んな! 息すんな! 汚染される!」


 わんわんわんんわん耳に響く。

 何も見たくないし、なにも聞きたくないの奇遇だね…できれば息もしたくないけどそれは仕方ないのごめんね。

 生きていてごめんね。

 死ねなくてごめんね。

 出来るだけ声も出さないし、動かないし、見ないようにするから、音だけ聞かせて。

 みんなが楽しそうにしゃべっている声。

 
 それだけで、空想できるから。


 それだけで良いって思ってたのに…。



 「はーい! みなさーん! 今日からこの6年3組のクラスの仲間になる殿城ゆう(とのしろゆう)さんです!」


 私の耳に先生の声。

 「殿城ゆうです! 東京から来ました! よろしくお願いします!」

 可愛い女の子の声。

 私はちらっと教壇をみる。

 ボブヘアーの女の子。

 私と同じくらい太ってる子。