「ったく…!」
アタシが取り敢えずトートバッグからプリントの封筒を出して、郵便受けに突っ込もうとした時だった。
「あらぁ~確か山下さんだったかしら?」
背後から間の抜けた声。
振り向くと、そこには買い物袋を下げた中年太りのおばさん…あ。
このおばさん、石川のお母さんだ!
「あらあら~ミカのお見舞い?」
「は、はい! 先生にプリントを頼まれて…」
「まぁまぁ~そうなの~どうぞどうぞ上がってちょうだいな~」
「ぇ? いえ、あのっ」
こっちの都合などお構いないしに石川のお母さんは、ざかざかとアタシを家の中へと押し込んでそのまま二階へと続く階段へと背中を押す!
「それじゃぁ~ミカのお部屋で待ってて~あの子ったら今お風呂みたいだから~」
「あ、あの!」
「…今日はありがとうね」
階段を上がった先、突き当りの石川の部屋にアタシ放り込んで立ち去ろうとする横顔から笑顔が消える。
「え?」
「『あんな事』があって、あの子…クラスのお友達が来てくれるなんて…本当にありがとうね」
パタン。
げ、ドアが閉じた。
