こ、コイツ…自分で話を振った癖に!

 「それさぁ、石川んとこまで持っていくだけでいいんでしょ?」

 
 つまんなそうにしていた春奈が、ちらっとアタシのトートバッグを指さす。

 「うん、そうなんだけど…」

 「じゃあさ、だれか他の奴にやらせりゃいいじゃん? 例えばほら…アイツとかぁ?」

 春奈の指がトートバッグからそれて、廊下の方を指さす。


 「ぁ」

 急に指をさされ、すっとろく歩いていた脂肪の塊は小さな声をあげた。


 「かして~♪」

 春奈は、アタシのトートバッグからプリントのびっしり入った封筒を取り出してそいつに押し付ける。


 「これさ、石川んちまで持ってってくんない?」

 「ぇ?」

 「出来るよなぁ? つか、やれよ」

 「でも…私、石川さんの家しらな…」

 「は? 冷た~…友達が二人とも行方不明で今すげー傷つてる石川の事心配じゃねーの? ひどぉお! つか、家くらい自分で調べれば?」


 また、いつものように俯いて黙り込んだ脂肪の塊の脚を春奈がこつんのつま先でこずつように蹴る。