「普通だな…かなり古いけどむしろキレイだ」
拍子抜けだと言いたげにケントが呟く。
玄関を潜り、廊下を通ってリビング…台所に通されたボクとケントは四人掛けテーブルに並んで腰かけ彼女が紅茶を入れるのを待っていた。
「な、言った通り外見はあれだが普通の家だろう?」
「…」
ケントは、まるで探るようにあたりを見回す。
カチャ…。
「…どうぞ、今日はアールグレイなんだけど…」
おずおずと差し出すティーセットからは、ふわりと立ち込める香。
「ありがとう…コレ」
ボクは持参していた手土産を彼女に渡す。
「わぁ…ありがとう! お皿に出すね!」
彼女はうきうきと戸棚から皿を取り出して、箱の中からケーキをとりわける。
「おい」
そんな様子を見ていたケントが、不意に彼女に声をかけた。
「ひゃっ?! え、はい?」
「便所どこだ?」
「と、トイレ?」
「早く教えろもれる」
「ええっと、廊下を出て_____」
彼女にトイレの場所を聞いたケントは、ぶすっとした顔でずかずかと廊下へと出て行った。
