西村勉がいなくなった。
登校するなり駆け寄ってきたミカがボクにそう言った。
「は?」
「だから、昨日から家に帰ってないんだって! 昨日家に勉のお母さんが電話して来て『勉きてませんか?』って! クラスのみんなに掛かってきたみたいなの! ゆっぽんの家は…あ、メイドさんが取っちゃったのかもね…」
可能性は高い…その程度の電話ならわざわざボクには報告はしなさそうだ。
「今朝まで戻ってないのか?」
「わかんない…朝、登校したらクラス中この話だったから」
「そうか…」
勉がいなくなった。
もし確定なら…これでこのクラスからの失踪者が3人という事になる。
一体どうなってるんだ?
「ねぇ…ホントにあの子って何もしてないの?」
ミカが、小声で耳打ちしながら視線をちらりとあちらへ素早く動かす。
そこには、大きな体を小さく丸めながら俯き窮屈そうに席に着く彼女の姿。
はた目にもどこか具合でも悪そうに見えるその姿は、より一層もじもじとしていて見ている方は心地よくはない。
まぁ、そんなに気落ちさせたのはほかでもないボクなのだけれど。
