斗真(とうま)先輩のシュートが決まった直後、ホイッスルが鳴ってハーフタイムになった。鮮やかなブルーのユニフォーム、我が東高のイレブンが、額に汗を光らせながらベンチに戻ってきた。マネージャーである私の差し出したタオルを、選手が次々と受け取っていく。
 ひょい、と手を伸ばして、憧れの斗真先輩が私の手からタオルを取った。先輩の手が私の手に触れて、ドキッとする。
「せ、先輩、シュートかっこよかったです」
 私の言葉に、先輩が爽やかに微笑んだ。
「ありがとう」
 タオルで汗を拭きながら、私の耳に唇を寄せる。
「美湖(みこ)のために決めたんだ。美湖を本大会に連れていく。もっと俺を見てほしいから」
「それって……」
 私の頬が熱くなったとき、左側から腐れ縁の幼なじみ、陽大(ひなた)の声が割り込んできた。
「次のシュートはぜってー俺が決める! 美湖を本大会に連れていくのは俺だからな!」
 そう言って陽大が先輩を睨んでいる。
「な、何言ってんの! 試合中なんだからチームプレーだってば」
 私の言葉を無視して、陽大が先輩に挑戦的に言う。
「俺の方が先輩よりたくさん点を取ってみせる」
 陽大の言葉に、先輩がフッと笑った。
「じゃあ、シュートを多く決めた方が美湖をもらうことにしようか」
「せ、先輩までっ」
 あわてる私に、先輩は余裕の笑顔。
「美湖のためなら負ける気がしない」
「俺だって!」
 話せるだけでドキドキしてしまう大人な先輩と、一緒にいて気楽な幼なじみ。二人からの熱い視線に、鼓動がどんどん高まっていった。

【了】