「…自分の人生を捨ててでも殺してやりたい相手、琳子ちゃんにはいる?」

 まるで世間話でもするように言う彼女は、この異常な環境に慣れてしまっていた。

 「…そんなの間違ってると思います」

 それでもなお琳子が麻奈を追い込むから、堪らず僕は二人の会話を邪魔していた。

 「琳子、帰ろう」

 「でも」

 「僕は誰も悪くないと思ってる。だから帰ろう」

 強引に彼女の腕を引いてその場を離れたけど、麻奈の顔は怖くて見られなかった。

 背中が熱くなっていたから、恐らく酷い顔で睨まれていただろうとは想像出来た。